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症例 |
症状 |
年齢・性別 |
インフルエンザ脳症後 |
A君は、1歳11ヶ月の時、インフルエンザに罹患し… |
7歳 男性
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【2005年4月21日】 A君のお父さんが薬局に相談に来た。A君は、1歳11ヶ月の時、インフルエンザに罹患、解熱剤服用後、意識障害を起こし、その後寝たきりとなり、現在7歳になる。
「2004年5月から肺炎を繰り返し、抗生物質を使っても肺の影が消えないため気管切開をしなければならないと医師から言われたが、何か良い方法はないだろうか」との相談だった。
A君の服薬データーを見て、驚いた。わずか7歳で、何と、15種類もの薬を服用している。丈夫な大人が服用しても体を壊しそうな量だ。
「病気を治すのは自分自身の持っている治す力。薬で体に大きな負担をかけていたのでは、治す力も出てこない。中枢に作用する抗けいれん剤は急には中止できないが、それ以外は中止して、体を補う漢方薬を使うこと」と、
「体の弱っている時は、体に負担のかからない食事にする必要があるので、鼻からチューブで胃に入れている高タンパク・高カロリー液も中止し、酵素、エネルギー水、玄米スープに切り替えること」などをアドヴァイスした。
ところが、病院の主治医に相談したところ、抗生物質などを中止し漢方薬にすることは認められたが、高タンパク・高カロリー液を中止し代わりに酵素などを使う事は、カロリーが不足するとの事で認められなかった。
病気で体が弱っている時は、消化しやすいおかゆなどにすることは常識だ。食べたくも無いのに無理やり鼻から胃にチューブで流し込まれるのは辛いだろうに、病院はカロリーしか頭に無い。仕方が無いので、時期を見て外泊許可で家に連れて帰り、自宅で実行する事になった。
【2005年4月27日】 自宅に連れて帰り、高タンパク・高カロリー液を中止し、酵素・エネルギー水・玄米スープを少しずつ増量しながら、飲用してもらうことにした。気血を補い肺・内蔵を元気にする漢方薬も徐々に増量しながら服用することにする。
【2005年5月6日】 「舌苔がきれいになり、尿も茶色だったのがきれいになってきた。 痰を自力で出せるようになり、黄色の痰がたくさん出た。 体も引き締まってきた。 ガサガサだった足の皮膚がむけてきれいになった」とお母さんのうれしい報告。
一日中とろとろ眠っているような状態が続いているとの事で、抗けいれん剤の減量を開始した。まず就寝前に服用していたマイスタン0.5gを中止。これは、以前夜興奮して眠らないことがあったときに処方してもらい、その後ずっと服用していた。
【2005年5月10日】 就寝前服用のマイスタンを中止しても問題なし。まだ1日中とろとろしている。
【2005年5月14日】 今日病院に行って、今まで全種類を混ぜて処方していたのを、種類ごとに分包してもらい、アーテン散を中止。
【2005年5月24日】 抗けいれん剤の昼の服用を中止し、1日3回の服用を1日2回にしているが、特に問題なし。皮膚・髪の毛もつやが出てきれいになった。
【2005年6月17日】 「昨夜けいれんが続いたので、抗けいれん剤を服用させてしまったが、痰がうまく出せずに痙攣を起こしていたらしく、痰が出たらすっきりして笑顔も出てきた。今日は良く眠っている」とのこと。
【2005年6月23日】 「痰が出にくくなって苦しそう」との電話。汗の具合を聞いてみると、「以前は汗をかかなかったが、漢方薬で体が温まってきたせいか汗をかくようになった」とのこと、「汗をかくようになったため、水分が不足して痰が出にくくなっていると思うのでエネルギー水で水分をしっかり補給するように」とお話する。
【2005年6月29日】 「エネルギー水をしっかり補給したら、痰が出にくいということはなくなった。痰もだんだん少なくなってきているようだ。でも、この頃夜寝なくなった。つらそうな声をだす。疲れてくると寝るが・・・」とお母さんの心配そうな声。「催眠作用・習慣性のある抗けいれん剤を減量しているので、そういうこともあります。疲れると寝るなら何にも心配することはありません。」とお話する。
【2005年7月2日】 「2回分の薬を3回に分けて服用させていたが、あまり寝てばかりいるので、さらに、昼の薬を抜いている。夕方、たくさん痰が出た。」 「夜寝ないからといって、すぐ薬を服用させるのではなく、普通の子育てのように、添い寝したら、とても安心してよく眠った」と電話があった。
すばらしい!抗けいれん剤の減量にも積極的に取組めるようになったし、「普通の子育て」に気付いてくれてよかった。
「普通の子育てだったら、寝ないからと言ってすぐ薬を飲ませるようなことはしないですものね」としみじみ言ったお母さんの意識の変化がうれしい。
【2005年7月8日】 ダントリウム中止。服用薬は4種類まで減った。1日の服用量も減量しているので、随分と減ってきた。お母さんもぐんぐん元気になるA君を目の当たりにして、減量・中止に積極的に取組むようになった。
「抗けいれん剤を減らしたら、今まで副作用で歯が隠れるくらい歯茎が腫れていたのが、腫れが引いた。 浅く速い呼吸が深くなった。 起きている時は、目をパッチリ開けて意識がはっきりしてきた。
寝たきりだったのが、起きて座っている事が好きになった。 笑顔も出るようになった。 気温の変化が激しい今頃は、しょっちゅう熱を出していたのに今年は熱を出して体調を崩すことがない。
今迄は、虫に刺されると腫れて熱を出して、後がジュクジュクになって何時までも治らない状態だったが、今は虫に刺されても、すぐに良くなる」と、うれしい報告が続く。
【2005年7月16日】 今日エクセグランを中止したとの電話があった。これで抗けいれん剤は、3種類まで減った。
漢方薬で治す力を引き出すお手伝いをし、抗けいれん剤を減量した事で、A君はぐんぐん元気になっている。「脳の萎縮・痴呆様症状・横紋筋融解症などの強い副作用のあるデパケン(抗けいれん剤)」も、徐々に減量している。
病院にそのまま入院していたら、今頃は気管切開されてさらに弱っていただろう。「治す薬」ではなく、「症状を抑えるだけの薬」で、脳障害を起こし寝たきりにさせ、さらに大量の薬で体力を低下させ肺炎などを繰り返す状態にし、其の上、体を傷つけ(気管切開)ようとする現代医療とはいったい何だろう?
「症状はすべて悪い事だから、すべて押さえ込む」という「西洋医学的思考」の医療者と、その影響を受けた患者側の「症状が出ると怖い」との強い意識が結びついた結果、現代医療は治癒から程遠いものになった。A君の場合、「症状を抑える=下げるべきではない風邪の熱を下げる」という出発点から間違っていた。
「一生服用し続けなければならないと思い込んでいた抗けいれん剤を止められるとは夢にも思わなかった」とA君のお母さんは言った。しかし、ぐんぐん良くなるA君を目の当たりにして、やっと「西洋医学的思考」の呪縛から解放され、今では積極的に減量・中止に取組んでいる。お母さんの意識の変化がA君を救う。
1つ薬を中止するたびに禁断症状のような症状が出ることもあるが、お母さんは、体が表す症状を良く観て、対処できるようになった。A君の回復がとても楽しみだ。西洋医学の医師は決して治らないと決め付けているが、人間の体は医療を遥かに超えるすばらしい力を持っている。がんばれ!A君!お母さん!
【2005年7月21日】 エクセグランを中止しても特に問題なし。今日から、3種類の抗けいれん剤の1回分を2回に分けて服用(1日量としては、3分の1の量に減量)。
【2005年7月25日】 酵素の活性を抑えていない「活性酵素」に切り替える。飲み始めてからここ2〜3日は、1日4回下痢。体の全体状態は特に問題なく良好。
酵素会社研究室N氏に問い合わせたところ「活性酵素は、糖度を上げて活性を抑えている普通の酵素より酵素活性が高く酵母菌の活性も高いので、腸内環境が急激に変化し、下痢することもあるが、問題ない。慣れてくれば、腸内環境が改善されて元気になる」とのこと。
【2005年7月29日】 咳、痰がなくなった。吸引の必要もなくなった。肺は完全に回復した。間質性肺炎などの副作用のあるエクセグランを中止して、肺への負担も軽くなった。ぐんぐん良くなっていくので本当にうれしい。「抗生物質を服用しても肺の影が消えず気管切開しなければならない」と言われて、4月下旬に当薬局に来て3ヶ月、驚くべき回復力だ。生命力にあふれている子供の回復力はすごい。
今晩からデパケンを中止する。これで、抗けいれん剤は、2種類になった。1日量も3分の1に減量している。15種類の薬を服用していた3ヶ月前には想像も出来なかったほどA君は元気になった。15種類の薬がいかに体に負担をかけ体の回復を妨げていたかが分かる。
「病気を治す薬」だと思って服用している患者さんが多いが、西洋医学の薬のほとんどは対症療法の薬、つまり治すのではなく「症状を抑えるための薬」で、必要最小限の量を短期間だけ服用するのが原則で、漫然と飲み続けるものではない。効果と副作用を天秤にかけて、効果が副作用を上回る時のみ、少量・短期間使用すべきものだ。
原因を良く観てそこを改善しなければ本当には治らないし、症状を抑えることばかりに気を取られていると、原因をじっくり観ることが出来なくなり、却って治癒からは遠ざかる。
■コメント A君は、デパケンを中止後、嘔吐するようになり、8月末頃には、水、食事、漢方薬が、僅かしか口から入らなくなり、また病院のお世話になる事になってしまいました。口から入らなくなると、もう家庭ではお手上げです。病院で点滴をしてもらうしかありません。
デパケンは、特に作用の強い薬なので、中止するには、もっと時間が必要でした。6年間も服用し続けてきた抗けいれん剤を減量・中止することは、本当に大変ですが、ここで諦めずに、体力が回復したなら、抗けいれん剤の減量・中止にぜひ取組んでほしいと願っています。子供の脳の回復を親が諦めてしまったら、誰が回復を手助けできるでしょうか。
両親の意見をきちんと医師に伝え、医師の協力の下で、減量・中止ができると一番良いと思います。症状を抑える治療ではなく、その子の治癒力を最大限に引き出す医療を施してくれる病院があればよいのですが…。
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